外傷性肩関節脱臼
 
症状と経過

 肩を挙上した状態で転倒し,手を地面についたときに起こりやすい脱臼である.患者さんは,
健側の手で患肢を抱きかかえた格好で来診する.肩関節外側の丸みがなくなり,肩峰が異常に突
出してみえる.肩関節を自動的に動かすことができず,他動的に動かそうとしても痛みと抵抗が
あり,わずかの角度動かしても,元の位置に戻ってしまう(ばね様固定).受傷後しばらく経つと
腫れてくる.

 触診すると脱臼した上腕骨骨頭が肩関節前下方に盛り上がっているのがわかる.

病態

 肩関節は受け皿である肩甲骨関節面が上腕骨骨頭に比べて非常に小さい.二足歩行ができるよ
うになり,腕がより自由に動かせるようになった人類の適応現象である.肩関節の上方は肩峰で
守られているが,下方には防止する構造はなく,上面からみると関節面は前方開きになってい
る.故に肩関節は前下方にもっとも脱臼を起こしやすい構造になっている(図7-16).

 骨と軟骨としての受け皿を補強するために,関節唇,関節包,腱板,補強靱帯が発達してい
る.受傷時には上腕骨骨頭が関節包を突き破って前下方に脱臼するが(図7-17),上腕骨骨頭は関
節包断裂部で締めつけられているためにばね様固定現象が起こる.整復の要点は,関節包断裂部
を無理なく通して,上腕骨骨頭を還納することである.

7-16.JPG















7-17.JPG



治療


 激しい痛みがあるので,できるだけ速やかに
整復しなければならない.術者の足を腋の下に
挟み込み,患肢を外旋させながら引き下げる整
復法が一般的である.断裂した関節包などの軟
部組織が修復するまでの期間,すなわち約3-6
週間の固定が必要である.軟部組織の緩みや欠
損が残ると反復性脱臼に移行する.

   

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