腕神経叢麻痺、分娩麻痺
 
症状と経過

 オートバイ事故で,頭の衝突は避けられたが肩甲部を強打したという損傷が多い.肩の挙上,
肘の屈曲,前腕の回外が不能となる.さらに強い外傷では肩から指先までの運動・感覚が障害さ
れる
6-10

病態

 頚部が伸展され,肩甲部が下方に牽引される
と,上位型(エルブ・デュシェンヌ)麻痺が起こ
り,上肢が挙上位のまま牽引されると下位型
(デュジェリーヌ・クルンプケ)麻痺となり,さ
らに強大な外力では全型麻痺となる.上位型で
は肩の挙上,肘の屈曲,前腕の回外が障害され
る.下位型では手指の運動・感覚が障害され
る.全型では上肢の機能全廃となる.

 脊髄神経根が脊髄から引きちぎられ,硬膜外
に引き抜かれた状態になることも多く,神経根
引き抜き損傷(root avulsion injury)(図6-10)と
いう.中枢神経損傷に属し,神経再生が望めな
い.脊髄造影で硬膜からの造影剤漏出や囊腫状
の陰影が認められる.運動麻痺と痛覚消失であ
るにもかかわらず,発汗障害がない場合は引き
抜き損傷である.

 分娩のときに不自然な肢位で牽引力が加わっ
て腕神経叢麻痺を起こすことがある.分娩麻痺
ともいわれ,上位型麻痺で自然に回復するもの
が多い.

治療

 複雑なネットワークを形成している腕神経叢の,どの神経にどの程度の損傷が起こっているか
を見極めることが重要である.臨床症状を丹念に調べて経過を観察する.3カ月経っても自然回
復がみられない場合は,腕神経叢を展開して直視下に損傷状態を調べる.各々の神経根を電気的
に刺激して体性感覚誘発電位の有無により連続性を確認し,神経修復術を考慮する.引き抜き損
傷では神経修復術の適応はなく,筋移行術による機能再建を図るか,肋間神経移行術を行う.

 分娩麻痺は自然に回復する例が多いので,幼時期には経過をみる.麻痺が残った場合の機能再
建術は学童期以後に行われる.



   

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