外傷性脊髄損傷

症状と経過

 交通事故,高所からの転落,スポーツ外傷などで脊椎の骨折や脱臼骨折を起こした結果として
脊髄が損傷される.好発レベルは頚椎と胸腰椎移行部である.

》頚髄損傷

 オートバイ運転時などは頭部を守るためにヘルメットの着用を義務づけられているが,ヘル
メットは頚椎損傷を防止できない.
 交通事故の患者では頚椎損傷の可能性を念頭において診察すべきである.まず呼吸が十分でき
るかを確認する.第4頚髄より高位の損傷では,横隔膜運動も麻痺して人工呼吸が必要になる.
第5頚髄以下の損傷でも肋間神経麻痺のために胸郭が十分に拡大できなくなる.指の屈曲・伸
展,肘の屈曲・伸展,肩の挙上ができるかを調べる.下肢では足関節の自動背・底屈を調べる.
指先や足趾を針で刺激して痛覚障害の有無を確認する.痛覚の完全消失例では両上・下肢の麻痺
すなわち四肢麻痺を残す可能性が高い.
 X 線像で骨折や脱臼が明らかでない頚髄損傷がしばしばみられる.高齢者では骨折や脱臼を
起こすほどの外力が加わらなくとも,脊髄が損傷される.脊髄の中心部の麻痺を起こす傾向があ
り,手袋と靴下で被われる範囲のしびれが強く,中心性頚髄損傷といわれる.麻痺は下肢から回
復が始まり,自排尿が可能となるが,手指のしびれが残る.

》胸腰髄損傷

 胸郭で守られている胸椎から可動域の大きい腰椎に移行する胸腰椎移行部は損傷を受けやすい.
脊椎圧迫骨折で椎体後壁が損傷された場合や脱臼骨折で椎体間にずれが起こった場合に脊髄
が損傷される(図5-2,3).両下肢の麻痺,すなわち対麻痺を起こす.

病態

 受傷時瞬間に椎体後壁の損傷や椎体間のずれがどの程度起こっていたかによって脊髄損傷の重
症度が決まる(図5-2,3).頚椎の過伸展損傷では前方から骨棘や椎間板,後方から椎弓上縁に
よって脊髄が挟み込まれる損傷を起こすが,受傷後のX 線像では骨障害がみられない(図5-4).

5-2 5-3  5-4 

治療

 @受傷後24時間以内では損傷脊髄近傍に出血や浮腫が拡がるので,損傷部位を無謀に動かさ
ないことが重要である.A呼吸を確保するためには気管切開が必要である.B尿路管理には間欠
導尿法が優先されるが,感染予防と膀胱容量の維持につとめる.C2-4時間に1回の体位変換を
行い,褥瘡を予防する.D早期リハビリテーションを開始する.


  

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