【病態】
年をとれば誰でも骨が薄くなるが,その程度が強い場合に骨粗鬆症という.年をとると髪の毛
が白くなったり,禿げたりするのと同様に,骨粗鬆傾向は正常の老化現象であって,とくにこわ
いものではない.個々の骨は硬い骨の外郭(皮質骨)と,内部に縦横に網目をなした骨(海綿骨,
骨梁)が詰まっている(図
2-14).この詰まっている骨梁の密度を骨密度といい,皮質骨を含めた
骨の総量を骨の量,すなわち骨量という.成長途上に骨量は増加し,20歳頃に最大となる.骨
量は
40歳頃までは一定に維持されるが,その後,年とともに徐々に減少する(図 2-15).この減
少傾向は閉経期後の女性に顕著である.内部の骨梁のうちで,体重を支える役割が低い横に走る
骨梁から薄くなり,縦の骨梁だけとなる.皮質骨は内側から吸収され,最外壁が薄く最後まで残
る.いろいろな測定装置によって骨量(骨密度)が測定されている.しかし単純 X 線像によって
も診断は容易である.
》腰椎側面像
@椎体の陰影希薄化(原板では骨は白く写るが,この白さが薄くなる.A横の骨梁が消え,縦
の骨梁が目立つ.B皮質骨が薄くなる(図
2-15).C椎体の前方がつぶれて楔形となる.D椎体中
央部がつぶれて魚椎状になる(図 2-16).多数の椎体がつぶれると背骨が円くなる(図
2-17).
》大腿骨近位端
骨端部をよくみると縦横に走る内部の
すじがみられるが,これを骨梁という.
圧縮骨梁と引っ張り骨梁の組み合わせで
応力伝達・分散を担っている.骨粗鬆症
では引っ張り骨梁(*)が先に消失し,荷
重伝達により重要な圧縮骨梁(☆)が残
る.皮質骨も内側から吸収され,外側の
薄い層だけが残る.骨粗鬆症の程度は重
要な合併症である大腿骨頚部骨折,転子
部骨折の危険度評価として有用である
(図
2-18).
【骨粗鬆症は正常の加齢変化で誰にでも起こる】
背部痛や腰痛を訴えるが,骨折がなければそれほどこわいものではない.強く咳をしたくらい
のことでも容易に脊椎や肋骨の骨折を起こす.転倒すれば脊椎,股の付け根,手首,肩の骨折と
なり,ものすごい痛みをきたす(図
2-19).
脊椎圧迫骨折緊急対策
背骨の骨折はものすごく痛くて,寝返りができなくなる.介助者が不用意に助け起こそうと
すれば,より激痛をきたす.お嫁さんが骨折したお姑さんをぐいっと起こしてやろうとすれ
ば,ものすごい痛みを与えてしまう.お姑さんはお嫁さんを叱りつけ,助けようとしたお嫁さ
んはむっとなって,喧嘩のもとになる.“高齢女性のぎっくり腰は嫁と姑の喧嘩のもと”と覚
える.固めのベッドに寝かせて,掴まれる柵などを作ることがコツである.患者さんはこれに
掴まって,手に力を入れれば,体幹筋も緊張して寝返りも容易となる. |
【治療】
脊椎圧迫骨折は安静のみで,骨折自体は数週間で変形を残したまま治癒し,激しい痛みは軽快
する.股の付け根の骨折はより重大である.大腿骨頚部骨折では人工骨頭置換術,転子部骨折で
は手術による内固定が必要となることが多い.
【転倒の予防対策】
@寝床に入ってから電気を消す.A立ち上がって方向転換するときに転倒しやすいので掴まれる
ものを用意する.B布団の角に注意する.C玄関など段差のある場所には手すりを付ける.D大
勢の人が集まるところには近づかない.E台所や風呂場などの濡れた床面はよく確認して歩く.
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