腰椎椎間板ヘルニア
 
 
椎間板の構造と機能

 脊柱は椎体という骨が連結しているが,連結部には椎間板という円板状の軟骨が挟まっている.
中心部の髄核には水飴のような粘性体が入っている.周辺の線維輪は多重の交錯した線維層
からなる,巧妙で強固な織物である.髄核は粘性物質が入ったボールベアリングの役割を担って
いて,背骨を屈伸するときに上下の椎体がベアリングを中心として回転運動をする.
 椎間板は容易にはつぶれない.骨と一緒につぶすと骨のほうが折れる.背骨の後方には後縦靱
帯というすじが張っているが,この靱帯は正中部で厚く,周辺部で薄い.圧縮変形した椎間板に
ねじりがかかると,後外側方向の線維が切れやすい.薄い後縦靱帯を押し上げて椎間板が膨隆す
るのが,ヘルニアの初期変化である.進行すれば後縦靱帯を突き破る(図 2-2).


2-2

 2-3


椎間板ヘルニアの発症


 前かがみで仕事をしていて,何かを持ち上げ
て立ち上がろうとしたときにぎくっとなる.
とくに物を横へ移動しようとして,体をひねると
きが危険である.
 線維輪の後方で左右どちらかに寄った部位が
弱点になっている.この部位の線維輪が破れて,
髄核の圧力によって椎間板が突出する.
 ヘルニア発症当初は腰痛のみであるが,突出
した椎間板が神経根を圧迫して,片側性の神経
痛を起こす(図 2-3).





症状と経過

 “腰がぎくっとなった”と急性に発症することが多いが,徐々に発症する例もある.最初は腰
痛が強くて,腰は曲がったままで動けないことが多い.腰痛に引き続いて片側のあし(脚)に痛みが
ひびくようになる.片あしのみにひびくのが普通である.顔を洗おうとして前屈したり,うがい
をしようとして後屈するのがつらい.膝を伸ばした状態で下肢を挙上すると,下肢放散痛が増強
して挙上できない.これは下肢伸展挙上制限(ラセーグ徴候)といって,症状強弱の目安となる.


病態


 突出したヘルニアが神経根を圧迫して下肢にひびく痛みを起こす(図 2-4,5).ヘルニアは自然
に縮小したり一部吸収されて,神経への圧迫が解除される傾向がある.しかし一度ヘルニアが出
ると,その通り道は弱くなるので,再発しやすい.



2-4 2-5 


自宅での応急対策と治療の基本

 2-6


 @ぎっくり腰を起こして激痛があるときは,自分が一番楽な姿勢で安静を保つ.どんな格好でも
  よいが,一般に図 2-6のような姿勢が楽である.痛い動作を避けるのが基本である.
 Aコルセットの着用,B消炎鎮痛薬や座薬の使用,C硬膜外や神経根への局所麻酔薬の注入など
  の保存療法をまず行う.
 D保存療法を行っても耐えきれない痛みが続く場合には手術を考える.施設によって差がある
  が,手術の適応となる症例は全ヘルニア症例の数%である.


  

トップへ移動
トップへ戻る
前のページへ戻る
前のページへ戻る