深部静脈血栓症、肺塞栓症

  
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深部静脈血栓症

  大きな外傷や手術の後や長時間座位で動けな
 かった後などに,下肢の静脈に血液の塊(凝血)
 ができる病気を深部静脈血栓症(DVT)(図13-5a)
 という.血栓が刺激となって静脈の炎症を起
 こすので,血栓性静脈炎ともいわれる.

  ふくらはぎや大腿部の痛みが初期症状である
 が,これを訴えとしない場合が多い.気づかれ
 にくい病気とされている.担当医は患者の下肢
 を毎日,眼で見,手で触って診察する必要があ
 る.下肢のむくみ,軟部組織の圧痛,発赤,温
 度上昇などの症状が続くので,これらをチェッ
 クする.足関節を他動的に背屈させると,ふく
 らはぎに痛みを感じるのも症状で,ホーマンズ
 徴候といわれる.

  臨床症状で血栓が疑われる場合は超音波や静
 脈造影で確認し,血液凝固因子の検査を行う.
 多くの血栓は自然に溶解して治癒するが,血栓
 が肺へ飛んで肺塞栓症を起こすことが重大問題
 である.整形外科の手術後に本症が発生する率
 は診断精度にもよるが,軽症例を含めると20
 数%に達するとされている.


肺塞栓症

  下肢に形成された血栓が,心臓を通って,肺
 動脈に詰まってしまう状態を肺塞栓症(PE)
 (図13-5b)という.手術後1-2週で歩き始めた頃に,突然に発症する.急激な胸の痛み,呼吸困難,
 喀血などの症状をみるが,急激な胸痛と同時に蒼白となって急死する場合もある.深部静脈血栓
 症の患者に対しては肺塞栓症のリスクを考え,血中酸素濃度の検査,肺のX 線撮影・CT やシンチ
 グラフィーを行う.致命的な肺塞栓症は欧米では0.5%といわれている.

患者説明と予防

  いわゆる「エコノミークラス症候群」として,この疾患群についての関心が喚起された.これ
 まで日本における本症の発生頻度は低かったが,高齢化と食生活の欧米化によって,今後は頻度
 が高くなると予測されている.肺塞栓症の合併リスクは術前説明に不可欠となっているが,患者
 に過剰な心配をかけてはならない。本症発生には体質が関与している.深部静脈血栓症の既往や
 家系内発生がある症例は最高リスクであり,心脈管病,悪性腫瘍,肥満,糖尿病もリスクである.
 下肢の静脈血が心臓に還流するには下肢の筋肉の収縮が重要な役割を果たしている.
 術前から臥位での足関節屈伸と膝伸展の訓練を行い,術後覚醒直後からこれらの自動運動を行わ
 せることが予防の基本である.リスクの程度に応じて,弾性ストッキング,間欠的空気圧迫法,
 抗凝血薬療法などが行われる.



   

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