大腿骨頚部骨折、大腿骨転子部骨折
 
症状と経過

  高齢者が転倒して立ち上がれなくなったら,まず股の付け根の骨折を考える.大腿骨の骨頭直
 下で折れるのが大腿骨頚部骨折(図11-9),これより遠位の大転子レベルで折れるのが大腿骨転子
 部骨折(図11-10)である.転子部骨折は頚部骨折に比べて,より高齢者に起こる.股の付け根の
 部分に痛みを訴え,自分の足を持ち上げたり,足が踏み立てられなくなる.頚部骨折は外見上の
 腫れがはっきりしないのに対して,転子部骨折では腫れや皮下出血が明らかである.家庭内や高
 齢者介護施設内で起こることが多い.速やかに診療可能な病院を受診する.

病態

  大腿骨骨頭直下から大転子・小転子までの大腿骨頚部は骨粗鬆症によってとくに骨が薄くなる
 部位である.片脚で立ったときには股関節に体重の4倍の力が加わるが,この力が加わった状態
 でよろめくと,大腿骨頚部にはねじれの力が加わって骨折する.転倒の結果骨折が起こるのでは
 なく,骨折が起こった結果転倒するとも考えられている.室内での骨折が多いが,立ち上がって
 すぐ方向転換するときにとくに多い.方向転換するときは片脚立位の状態で両脚が交叉すること
 になるので,非常に不安定となる.高齢者には何かにつかまって方向転換するように指導する.

11-9 11-10

治療

 大腿骨頚部骨折
  圧迫スクリューで固定する方法と,人工骨頭を挿入する方法がある.術後の安静期間が短い人
  工骨頭手術が繁用されている.転位がごく軽度の骨折でも保存療法中に大きく転位することがあ
  るので,スクリュー固定する.

 大腿骨転子部骨折
  安定型に対しては下肢の鋼線牽引でも対応できる.しかし80歳以上の高齢者では2-3日間の
  臥床によって痴呆や呼吸・循環器系の合併症を起こすことが多い.圧迫スクリュープレートやエ
  ンダー釘などの内固定によって,臥床期間の短縮が図られている.


   

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