先天性股関節脱臼、前股関節症
 
症状と経過

  かつては乳幼児における代表的股関節疾患であった.乳幼児の大腿骨頭が関節包内で脱臼,
 あるいは亜脱臼となっており,臼蓋の形成不全を伴う状態を先天性股関節脱臼と称してきた(図11-
 7,8).周産期および出生後の発育過程で脱臼が起こるということがわかってきて,現在は「発育
 性股関節脱臼」といわれる傾向にある.

  股関節の痛みを訴えるのは成長終了後であるが,前述の変形性股関節症の原因として重要なの
 で,その病態を理解しておかなければならない.発生率は出産1,000に対して1〜3 (0.1〜0.3%)で,
 女児に多い.新生児や乳児の下肢の位置や大腿内側の皮膚の「ひだ」が左右非対称であるこ
 となどで気付かれることもある.歩行開始後の乳幼児では歩行異常で気付かれることもある.

  股関節症患者の既往歴に,中学・高校生の頃,長歩きしたり,スポーツをした後に股関節痛を
 覚え,その痛みは翌日には軽快してしまったので,詳しい診察を受けなかったという例がある
 が,亜脱臼や臼蓋形成不全による症状で,前股関節症といわれる.

病態

  先天股脱が同一家系内に多くみられること,一卵性双生児にほとんど同じ脱臼像が発症するこ
 となどから遺伝的要因が関与していることは否定できない.しかし関節は1つの組織の塊が2つ
 に分かれてできあがるので,脱臼は股関節発生後の現象である.関節が軟らかい体質が脱臼発生
 に関係し,この体質が遺伝すると考えられている.軟らかい体質の乳幼児であっても,おむつの
 あて方の改善など出生後に脱臼を起こしやすい肢位を取らせないことによって発生率は激減した.

 11-7 11-8 

治療

  乳幼児の先天股脱に対してはリーメンビューゲルという装具による治療が第一選択となっている.
 乳幼児期の治療後に亜脱臼や臼蓋形成不全が残って,股関節症に移行することが問題である.

   

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