変形性股関節症
 
症状と経過
 
  成人,とくに女性の股関節疾患としてもっとも多い.歩きすぎた後に脚(あし)や腰がだるい,
 重いといった症状で始まり,次第に股関節中心の痛みを訴える.故に腰椎椎間板ヘルニアや膝関
 節症と混同される例もある.初期には年に数回,痛みを感じるが数日で痛みが軽快して,日常動
 作に支障がない.進行すると,毎月,毎週,毎日と痛みを感じる間隔が短くなり,痛みが軽快す
 るまでの日数も長くなり,さらに一歩ごとに痛みを感じるようになる.立ち上がり後の第一歩が
 とくに痛い.無意識に痛みのあるあしをかばって,痛みのある側へ肩が揺れる異常歩行となる.
 股の開きが悪くなり,痛いほうのあしが短く感じるようになる.自分のあしが持ち上がらないの
 で,車に乗るときに手であしを持ち上げたり,寝ていて毛布一枚を蹴上げるのが困難となる.
 末期には安静にしていても痛みがあり,夜寝ていても痛みのために目を覚ますようになる.

病態
 
  正常の股関節では,大腿骨頭が寛骨臼の中に完全に収まっている(図11-1).片脚立位では股関
 節に体重の4倍の力が加わっている.先天性股関節亜脱臼や臼蓋形成不全では寛骨臼が浅くなり,
 臼蓋すなわち屋根の部分の傾斜が強くなっている.
  X 線像上で体重を受けられる屋根の横幅比(P/N)が1/2になれば,面積は1/4になる.
 広いヒールの靴で踏まれるのに比べて,尖ったヒールの靴で踏まれれば驚くほど痛いものである.
 体重を受ける部分の面積が小さくなっているので,関節面軟骨にかかる荷重が大きい.
 この荷重が長年にわたってかかり続けることによって,荷重部軟骨がすり減ることが股関節症の基
 本的病態である(図11-2).
  ペルテス病や大腿骨頭すべり症,その他の病気で骨頭や寛骨臼の形状が変形すれば,股関節の
 当たり面が不良となり,力が集中した関節面の軟骨がすり減る.これら何らかの病変に続発する
 股関節症を二次性股関節症という.特別な先行病変が明らかでない一次性股関節症もあるが,そ
 の例数は少ない.しかし高齢人口の増加と,食習慣の変化によって,欧米並に一次性股関節症が
 増加する可能性がある.

11-1 11-2 

11-3 11-4
 11-5  11-6

治療


・病態を理解し,痛い関節に無理をかけないことが基本である.階段昇降など日常動作の障害を
  記録し,痛みが起こった時期と痛みが治まるまでの日数を記録する.痛みを感じる間隔が短く
  なり,痛みが治まるまでの日数が長くなるのが病状進行の重要な目安であるので,この記録を
  担当医に提示し,定期的にX 線診断を受ける.痛みが起こる前にあし(脚)が重い,だるいな
  どの前兆があるので,早めに休みを入れる.杖一本を使うことによって股関節にかかる力は 
  体重の半分に軽減できるので,積極的に杖を使用する.
・関節面の適合性を改善する目的で寛骨臼や大腿骨を回転したりする手術,または緊張している
  筋肉を緩める手術が行われている.最終的には人工股関節の適応になることが多い.
  しかし人工股関節の耐用年数にも限界があるので,できるだけ股関節に負担がかからない
  ように生活環境を改善しておくことが重要である.


   

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