いわゆる寝違え
 
症状と経過

 『国語大辞典』(小学館)によると,寝違えは“睡眠中の無理な姿勢のために筋を痛めて,目が
さめたあと頚が自由に曲がらなかったり、腕が上がらなかったりする状態”と説明されている。
すなわち寝違えは一般用語であって,医学用語ではないが,臨床的にはしばしば遭遇する病態で
ある.英語の“acute stiff neck”に対応して「急性頚部痛・可動制限」とも訳すことができるが
「寝違え」のほうがわかりやすい。朝の起きがけに急に頚を動かせなくなるのが特徴である。
左右のどちらかへの回旋が特に困難となる.深酒をして不自然な姿勢で寝込んだ,前日まで根を
詰めた仕事をしたといったことが誘因となる.30-40歳台に比較的多い.症状が軽く,数日で自
然に治癒する例が多いが,頚をまったく動かせず,なかなか治りにくい例もある.頚椎椎間板ヘ
ルニアとの鑑別が重要である.寝違えでは苦悶表情とならないのが普通であるが(図 1-11a),手
指に放散する痛みがあり,かつ苦しそうな表情をしているときはヘルニアの可能性が高い(図 1-11b).

1-11ab


病態


椎間関節の軽度の噛み込み異常(derangement)が起こっていると考えられているが,確証はない.
痛みに対する頚部軟部組織の過緊張によって可動制限を起こす.


治療

@病態を理解させ,安心させる.痛みを感じる方向には無理に回旋させない.できれば寝ころん
  で休むか,ヘッドレストに頭を乗せて休む.消炎鎮痛薬や筋弛緩薬,芍薬甘草湯(漢方薬)の内
  服,パップ剤貼付などを行う.マニプレーションをして瞬時に治すという整骨師の施術法があ
  り,整形外科医が治せなかったものを一発で治したと得意がることがある.しかし自然治癒す
  る病気であり,破壊性の脊椎病変がある場合は非常に危険を伴うので,この施術は一般的には
  勧められない.
A寝違えを繰り返して起こす人は,頚の筋肉を鍛える予防対策が必要である.自分の手で頚の動
  きを押さえておいて,頚の筋肉に力を入れて 5秒間保ち,筋肉の力を緩めて 5秒間休むことを
  繰り返すセッティング訓練である.額を手のひらで押し,頭が動かないように頚の筋肉に力を
  入れて手を押し返す.これを後ろや左右の方向にも行う.朝,昼,夕方たとえばそれぞれ 5回
  ずつ実行する


  

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